歯周病で歯が全て無くなったとしても
総入れ歯という治療法がある。
総入れ歯の利点の一つとして
お手入れがシンプルなことがある。
食後は義歯を外してスポンジや柔らかい毛先のブラシで
ゴシゴシお掃除
お口の中はブクブク含嗽すればスッキリ綺麗になる。
歯ブラシやフロスを使って歯を磨くことを考えれば
総義歯は手間が随分省ける。
ただ、義歯は全ての患者さんに満足してもらえる
万能な物ではない。
特に下顎の総義歯は舌と絶えず接触し
力を受ける為、外れやすいなど
不快に感じることも珍しくはない。
その点、インプラントは骨と結合する為
動揺せず 快適である。
しかし、インプラントも万能ではない。
細菌に弱く、歯ブラシなどのお手入れ次第では
インプラント周囲炎を発症し
歯周病と同じように周囲の骨が吸収してしまうことがある。
しかし、疑問に思う人もいるのではないだろうか。
一度総義歯になった人がインプラントを入れるのならば
口の中から歯周病菌はいなくなっているのだから
歯ブラシしなくてもインプラント周囲炎にもならないのではないのかと…
今回の文献は上下とも歯が全てなく
上顎は総入れ歯で、下顎は2本のインプラントを
埋入してその上に義歯を乗せる
オーバーデンチャーを装着した患者さん150名に対し
下顎義歯装着後10年に渡り
インプラント周囲炎の罹患率を調べている。
結論は、10年後インプラント周囲炎を発症した
インプラントは全体の20.3%
患者単位では29.7%の人がインプラント周囲炎に
罹患したということ。
0%どころかかなり頻度の高い結果となったが
原因としては、インプラント周囲炎の原因は
歯周病菌に限らず、腸内細菌やカンジダ菌
皮膚に常在する黄色ブドウ球菌など日和見菌も
混在して複雑に形成された細菌叢であることが挙げられる。
また歯周病菌の一部は歯の表面だけではなく
粘膜細胞内に侵入し、そこで免疫機能を免れ
生息し続けるので、歯が無くなっても歯周病菌は
口腔内から減少はするが完全にいなくなるわけではない。
歯にしてもインプラントにしても
プラーク除去が重要になること
また定期的なチェックを欠かせないことが
改めて分かった。
参考文献
Meijer HJ1, Raghoebar GM, de Waal YC, Vissink A.
Incidence of peri-implant mucositis and peri-implantitis in edentulous patients with an implant-retained mandibular overdenture during a 10-year follow-up period.
J Clin Periodontol. 2014 Dec;41(12):1178-83.