虫歯が進行し穴が大きくなってしまった
または何かの拍子に歯が割れてしまった
その様な欠損範囲が広い場合
言い換えれば修復範囲が広い場合には
治療の際に考えないといけないことがある。
歯は1日3度の食事の際
また一生懸命仕事を頑張っていて食いしばっている時
更には一日が終わり、寝ながら歯ぎしりをしている時
もちろんそれらは人それぞれだが
何かにつけて上下の歯と歯同士が咬み合い
それによる力を受け続けるという過酷な環境に置かれている。
休む暇のない心臓にも似ているかもしれない。
修復範囲が広い場合には
治療後の修復物や残った歯が
その様な絶えず受ける咬合力に負けて
再度欠けたり取れたりしてしまわない様
頑丈に修復していくことも大切である。
その様な点から優れている修復方法として
全体を冠で被せる、全部被覆冠による補綴処置がある。
しかし、この治療により
元々神経が生きている歯が失活(死んでしまう)
してしまうという報告がある。
アテネ大学病院での調査によると
患者33名に対し支台歯形成(土台の形に歯を削り形作ること)
を行った時点で神経が生きている歯120歯について
前向き研究を行った所
6歯が型取り時に
5歯は冠をかぶせる直前に失活していたとのこと。
失活の検査は電気歯髄診断器にて行われ
また、冠が入るまでの間は仮歯を被せており
その期間は6~10週間とのこと。
特に失活し易かったのは下顎前歯であり
元々の歯が細い為
支台歯形成により健全な象牙質を十分に確保
することが難しかったことが原因と考えられる。
歯を削る際には、その位置・量を考え
冠を被せるメリットと削るデメリットを十分に
天秤にかけなければならない。
また、治療後も被せたから安心というものではなく
定期的に臨床症状がないか、またエックス線で
失活している所見がないか確認し
異常が有れば根管治療に切り替えなければならない
ことを学んだ。
参照文献
Kontakiotis EG, Filippatos CG, Stefopoulos S, Tzanetakis GN.
A prospective study of the incidence of asymptomatic pulp necrosis following crown preparation.
Int Endod J. 2015 Jun;48(6):512-7.