今回は
高齢義歯装着者の機能評価を目的とした
診査法の有用性を明らかにすることが目的の文献です。
鶴見大学歯学部附属病院補綴科に来院した
上下顎全部床義歯患者5 名に対し
機能的な回復を図るため
適正な床縁と咬合接触を与えた新義歯を製作しています。
初診時,新義歯装着時,装着後2 ヵ月以上経過時に
下顎運動と筋電図を記録しています。
空口時の開閉口運動,前方および側方滑走運動
被験者自身のリズムによるタッピング運動
咀嚼運動,ピーナッツ咀嚼試験による咀嚼能力を比較しています。
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結果は
開閉口運動,タッピング運動では
新義歯において運動経路と咬合位とが安定し
また開閉口速度の増加と左右同名筋における
筋活動の協調性が認められた。
ピーナッツ咀嚼では,新義歯において咀嚼側から
咬合位に至る運動経路が安定し,また筋活動量,咀嚼リズムともに向上した.
ピーナッツ咀嚼試験による咀嚼能力では
全被験者において咀嚼効率の増加が認められた。
滑走運動時の運動経路では,5 名中3 名の被験者において
旧義歯と新義歯との間に明確な相違が認められなかった。
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結論は
顎運動経路と筋電図とによる検査は,高齢全部床義歯患者に
適応可能であり,また機能評価に有用だった。
タッピング運動と咀嚼運動の観察により
適確な評価が行えることが判った
ということです。
引用文献
大貫昌理,細井紀雄
下顎運動測定装置による高齢全部床義歯患者の顎機能診査
老年歯科医学 1994 ; 9 : 73−83