今回の文献の目的は
両側性遊離端欠損に対する可撤性部分床義歯補綴治療の
効果を明らかにすることです。
両側性遊離端欠損患者7 名に対して
義歯装着直後・6 ヵ月・1 年・2 年・3 年
3.5 年後に,義歯装着時歯列(補綴歯列)と
義歯非装着時歯列(残存歯列)とで
最大かみしめ時とタッピング時の筋活動をEMGにて
更に最大かみしめ時の咬合力を
デンタルプレスケールにて記録しています。
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結果は
・最大かみしめ時の総咬合力は
補綴歯列では義歯装着直後が約400 N
6 ヵ月後~3.5 年後が約800~930 N
残存歯列では,義歯装着直後が約400 N
6 ヵ月後が530 N,1 年後~3.5 年後が約610~630 N
だった。
・最大かみしめ時の筋活動量は
継時的変化は補綴歯列で6 ヶ月後に約50%増加
2 年後から3 年後の間にさらに約20%増加し
装着直後と3 年後との間に有意差が認められた。
一方,残存歯列では補綴歯列と類似した傾向を示したが
有意差が認められなかった。
・最大かみしめ時の咬合力重心は
補綴歯列では1 年後まで徐々に前方へ移動する傾向がみられた。
一方,残存歯列では,経時的変化はみられなかった。
・タッピング時の総筋活動量は
補綴歯列と残存歯列との比較では,全観察期間において
残存歯列よりも補綴歯列が大きく
3 年後と3.5 年後とにおいて有意差が認められた。
・タッピング時の左右同名筋間の相関分析では
補綴歯列では,全観察期間において
左右咬筋間に有意な相関が認められた。
一方,残存歯列では,義歯装着時を除いて
左右咬筋間に有意な相関は認められなかった。
また側頭筋では咬筋で観察されたような一定の傾向は認められなかった。
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結論は
両側性遊離端欠損患者の咬筋と側頭筋は
可撤性部分床義歯補綴治療により活性化された。
治療の効果は,側頭筋よりも咬筋に大きく反映された
ということです。
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義歯の使用により咀嚼筋の機能をも回復出来ることと
人工歯は材質にも影響を受けますが、摩耗が生じる為
その定期的なチェックも欠かせないことが再認識出来ました。
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引用文献
瀧下護
両側性遊離端義歯による補綴治療の臨床生理学的評価 ― 3.5 年間の経時的観察
口病誌 2001 ; 68 : 254-261.